あずきとぎ婆さん(江南地域)
更新日:2023年5月31日
あずきとぎ婆さん
須賀広の後新田から重殿沼方面に通じている道は、今では道幅も広く舗装されていますが、60~70年位前は道幅も2m足らずの細道でした。その小道をはさんだ両側は山林で、大きな木々の枝が道の上に覆いかぶさり、昼間でもうす暗く、大変淋しいところでした。古老の話によると、前新田の「おかしらの屋敷」の西北から、この道あたりの山林を昔から「チョイモン屋敷」と呼んでいました。多分ずっと昔、長右衛門という人の屋敷があった所だったのではないでしょうか。
この「チョイモン屋敷」に古井戸があり、この井戸水で婆さんが出て、ヂョギ、ヂョギ、チャカ、チャカと小豆をとぐ音が聞こえてくると伝えられています。
子どもたちは、小豆とぎ婆さんが出るからこわいと言って遊びに夢中になっていても夕方は遅くならずに家に帰ったといいます。近くの重殿沼で遅くまで魚釣りをしたり、友達と暗くなるまで遊んでいて、チョイモン屋敷の所を通る時は、怖くて息をつめて駈け抜ける子どももいたそうです。子どもだけでなく、大人も気味悪がっていたようでした。雨降りの時や雨の続いた後など、特にチャカチャカという音が聞こえたともいわれています。
雨の後、両側の崖から滴る水の音や、その水が両側の小溝を流れる音が、小豆をといでいるように聞こえたのかもしれません。
小豆とぎ婆さんの話は、須賀広地区だけでなく、野原地区やその他の地区にもあって、いずれも山あいの水音のする淋しい場所でした。科学も開拓も進み、そのような場所がなくなった今では、小豆とぎ婆さんの話は全く聞かれなくなりました。
詳しくは、江南文化財センター(電話:048-536-5062)へ