帯状疱疹とは
帯状疱疹とは
帯状疱疹は、神経に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが活性化することで発症する皮膚疾患です。
通常右側、または左側どちらか一方に出るのが特徴で、痛みを伴う皮膚症状が3週間ほど継続します。
症状としてはまずピリピリ、チクチク、ズキズキといった神経痛が出て、1週間程度で痛みがある部分に赤い斑点が見られるようになります。
その後赤い斑点内に水ぶくれができ、水ぶくれが破れてびらん(ただれた状態)になり、最終的にそこがかさぶたになって症状がおさまる、という経過を辿ります。
【経過や痛みの程度には個人差があります】
原因
帯状疱疹の原因は水痘・帯状疱疹ウイルスなので、このウイルスの保有者であれば誰でも帯状疱疹になる可能性があります。
水痘・帯状疱疹ウイルスは水疱瘡(みずぼうそう)を引き起こすウイルスで、日本人の多くは幼少期に水疱瘡に罹患しているため、日本の成人の9割以上のかたがこのウイルスを保有しています。
初めて水疱瘡にかかった後、症状がおさまってもウイルスは完全に除去されるわけではなく、症状を出さない状態で体内(神経細胞)に潜み続けています。
神経細胞に潜伏していたウイルスは活性化すると、今度は、水疱瘡ではなく、帯状疱疹として発症してしまいます。
ウイルスが活性化する要因
ウイルスが活性化する原因は「免疫力の低下」です!
心身ともに健康であればこのウイルスが再び活性化することはありません。
免疫力が低下すると、免疫で抑えることができなくなり、潜伏していたウイルスが活性化してしまいます。
現代社会では、過労やそれに伴うストレス、体調管理不足、不摂生、人間関係によって引き起こされるストレスなどで免疫力が低下してしまうことが少なくありません。
様々な免疫力の低下が帯状疱疹発症のリスクとなりますが、中でも加齢の影響は大きく、50歳以上になると発症率が急増し、帯状疱疹患者の約7割を占めています。
また、80歳までに、約3人に1人が帯状疱疹を発症するといわれています。
予防法
免疫力を高める
帯状疱疹は「体内に潜む水痘・帯状疱疹ウイルスが、免疫力の低下によって体表に出てくる際の症状」です。
早寝早起き、バランスのとれた食事、十分な睡眠をとるなど、できるだけ健康的な生活習慣を保ち、免疫力を高めることが帯状疱疹はもちろん、様々な病気の予防に非常に有効です。
また適度に体を動かす、心身ともに落ち着いた時間をつくるようにするなど、ストレスが蓄積されないようにすることも大切です。
ワクチンで予防する
50歳以上の方は帯状疱疹予防ワクチンが接種できます。
(乾燥組換え帯状疱疹ワクチンについては、「帯状疱疹に罹患するリスクが高いと考えられる18歳以上のかた」も接種可能となりました。)
ワクチンを接種することで発症率が抑えられるだけでなく、もし発症してしまっても重症化しにくくなる、痛みが残りにくくなるなどが期待できます。
〈注意〉持病や使用しているお薬によってはワクチンを接種できないことがあります。ワクチン接種が可能かどうかはかかりつけ医にご相談ください。
【参考】帯状疱疹予防接種ワクチンの種類について
乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビケン) | 乾燥組換え帯状疱疹ワクチン (シングリックス) | |
---|---|---|
ワクチンの種類 | 生ワクチン | 組換えワクチン |
接種回数・接種方法 | 1回(皮下注射) | 2回(筋肉内注射) |
適用年齢 | 50歳以上 | 50歳以上(一部例外あり) |
予防効果 | 50から60% | 90%以上 |
持続期間 | 5年程度 | 10年以上 |
副反応 | 接種部位の痛み、腫れ、発赤などが報告されています。 ただし、症状や程度には個人差がありますので、 かかりつけ医と相談してから接種することを推奨しています。 | |
料金 | 医療機関によって異なります。 詳細は、医療機関へ直接お問い合わせください。 | |
長所 | 1回の接種でよい | 予防効果が高い |
短所 | 持続期間が短い | 2回の接種が必要 |
帯状疱疹の合併症
帯状疱疹が悪化すると、皮膚症状も水ぶくれが大きくなり、痛みも激烈となり、全身に水ぶくれがパラパラと現れてきます。中等症の一部と重症では入院治療も必要となります。
高齢者の場合、免疫力が低下しているためウイルスの活性化が強く、痛みや皮疹の程度が強く、重症化しやすくなります。
左右いずれかにズキズキ、ピリピリした痛みを感じたり、それが続いたりするようであれば、早めにお近くの皮膚科やかかりつけの内科を受診していただくことをお勧めします。
帯状疱疹後神経痛(PHN:Post Herpetic Neuralgia)
帯状疱疹の合併症の中でもっとも頻度の高い後遺症に、皮膚症状が治った後も痛みが残る、帯状疱疹後神経痛(PHN)があります。帯状疱疹を発症した人のおよそ20%が発症するといわれています。
50歳以上の帯状疱疹罹患者は、PHN に移行しやすく、加齢とともに移行率は高まることから、高齢者ほどPHNになりやすいと考えられています。
PHNの痛みは多様で、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」疼くような痛み、そして、軽い接触だけでも痛む「アロディニア」と呼ばれる痛みなどが混在しています。
皮膚感覚の異常がみられることもあり、ほとんどの場合、痛みのある皮膚の感覚は鈍くなります。
重症化すると、非常に強い痛みになることがあり、睡眠や日常生活に支障
をきたす場合もあります。
【痛みの程度や発症期間などは、個人差があります】
帯状疱疹後神経痛(PHN)の原因
帯状疱疹が発症する際、脊髄近くの神経節と呼ばれる部分に潜んでいたウイルスが神経を経由して移動し、皮膚の症状を発生させます。
ウイルスが神経を通ると、神経線維が傷つけられます。ウイルスによって神経線維が傷ついた結果、神経の過剰な興奮や自発痛、痛みを抑制する経路の障害などが起こるため、痛覚過敏やアロディニアなどが起こるとされています。
また、傷つけられた神経線維は、すぐに修復されないため、PHNの痛みは長期間持続することがあります。
帯状疱疹後神経痛(PHN)の治療法
帯状疱疹後神経痛(PHN)の治療のメインは薬物療法ですが、万人に当てはまる絶対的な治療法というものはありません。
PHNの痛みを完全に取り除くのは難しく、また治療は長期にわたります。そのため、患者さんが無理なく生活が送れるように、痛みをコントロールする治療を中心に行います。
その他の合併症
帯状疱疹の治療が遅れたり、治療しなかったりした場合には、発熱や頭痛のような全身的な症状が現れることがあります。
また、帯状疱疹ウイルスは、神経の流れに沿って障がいをおよぼすことから、目や耳など感覚器の神経を傷つけると、視力の低下や難聴などを引き起こします。運動神経を傷つけると、腕が上がらなくなるなどの合併症につながることもあります。
これらの症状は障がいや後遺症として残ることがあるので、注意が必要です。
帯状疱疹の合併症
「帯状疱疹」は、早期発見・早期治療が重要です!
帯状疱疹は、早期発見、早期治療が非常に重要です。
帯状疱疹は発見が早ければ早いほど治療効果が高く、発見後、可能な限り早期に抗ウイルス薬の服用を開始することで、重篤化しにくくなります。
特に高齢者の方は帯状疱疹になると重篤化したり後遺症が残る可能性が高くなってしまいます。
症状がひどくなってしまうと対策が制限されてしまったり、治療効果が薄くなってしまうことも多いので、もしズキズキ、ピリピリした痛みがあり「帯状疱疹かも…」と思ったらお近くの皮膚科やかかりつけの内科にすぐにご相談ください。
参考
