発達障害について
更新日:2024年9月1日
発達障害の原因として、生まれつきの脳の障害(微細損傷)が指摘されています。妊娠中の物理的・科学的障害、社会のIT化、遺伝的負因などと言われていますが、はっきりした原因はわかっていません。損傷の部位により、特徴的な障害が認められます。
今回は発達障害の分類や検査、診断、治療について説明いたします。発達障害は症状の表れかたで分類されます。コミュニケーションがうまくとれない、融通が利かずこだわりが強いなどの「自閉症スペクトラム障害」、落ち着きがなく、忘れ物をしやすいなどの「注意欠損・多動性障害(ADHD)」、言葉の発達や特定の分野の学習ができないなどの「学習障害」が主なものです。障害が複数重なって症状が出る場合もあります。障害が強い場合、幼小児期や学童期に乳児健診や保育園、学校で指摘される場合があります。ただし、障害の程度が軽い場合、変わり者や怠け者といった誤った認識をされる場合もあります。知的レベルが高いかたも多く、高学歴で社会人となり、就労後に不適応となり、発達障害と診断されるケースもあります。
診断は、医師による成育歴や状況の問診や、検査としては心理士による心理検査、発達検査、知能検査、MRIなど画像検査、脳波検査などが主なもので、検査や問診を総合して診断を行います。しかし、時として診断がつかなく、特に成長期では一定期間の観察により診断することもあります。
現在のところ、発達障害の完治が見込まれる治療はありませんが、症状の改善や軽減はできます。幼小児期に診断された場合、早期に生活訓練を行うなどの療育による対応が重要とされており、最近では、療育機関なども充実しつつあります。また、ADHDに対しては、症状を軽減する薬物もありますので、専門医を受診することをお勧めします。社会に出てから、発達障害により上手く生活できず、本人も病状の理解ができず、うつ病や統合失調症など精神疾患を併発するケースがあります。この場合、障害の特性を診断したうえで、精神疾患の治療が必要となります。社会での認識が高まる中、社会全体で発達障害について正しく理解し、それぞれの特性に配慮した対応をすることが重要と考えます。
熊谷市医師会 林 文明(はやし ふみあき)
