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口から食べる喜びをいつまでも

更新日:2025年10月1日

 『皆さんにとって「食べる楽しみ」は生活の中でどれくらいの割合を占めていますか?』
私が摂食嚥下えんげについてお話しする際、よくこの質問を投げかけます。皆さん答えはさまざまですが、迷わず「100パーセントです!」とおっしゃるかたがいらっしゃいます。それだけ、「口から食べること」は人にとって大きな喜びなのだと感じます。
 しかし、私たちは皆、年齢を重ねるとともに心身の機能が徐々に低下していきます。口腔こうくう機能や摂食嚥下機能も例外ではありません。皆さんの中には、ご自身やご家族、ご友人に「食べにくさ」を感じているかたはいらっしゃいませんか? たとえば「避ける食べ物がある」「よくむせる」「食後に声がかすれる」「滑舌が悪くなってきた」「食事に時間がかかる」などの症状はありませんか? 「食べられないわけではないけれど、以前とは少し違う気がする」そんな変化は、口腔機能の低下を示すサインかもしれません。
 口腔機能は複数の要素から成り立ち、それらが互いに補い合っているため、一部の機能が低下してもすぐに食べられなくなることは少なく、気づきにくいのが特徴です。歯科では、こうした変化を早期に発見するための検査が保険適用で実施できます。検査項目には、口腔衛生状態、口腔乾燥、咬合力こうごうりょく、舌や口唇こうしんの運動機能、ぜつあつ咀嚼そしゃく能力、嚥下機能があります。これらの機能を評価し、必要に応じて訓練を行うことで、口から食べられなくなることを予防したり、その時期を遅らせたりすることが期待されます。

 また、病気やけがなどにより一時的に経口摂取が困難になったかたが、病状が安定した後に再び「安全に食べられるか」を確認・評価することも歯科で行います。歯科は入れ歯やかみ合わせの専門家ですので、喉の状態に合わせて入れ歯の形を工夫することもできます。これにより「噛みやすさ」だけでなく「飲み込みやすさ」を向上させることも可能です。さらに、食事の形態や量、食べる時間帯なども工夫することで、安全な食事につなげることができます。そして機能を維持・向上させるために、コツコツと訓練を続けることも大切です。
 目標は「本人が楽しく食事をとること」そしてそれを「長く継続できること」です。どうか皆さんも、ご自身の口腔機能に目を向け、食べる楽しみをいつまでも謳歌おうかしてください。
              熊谷市歯科医師会 荒岡 千尋(あらおか ちひろ)

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