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聖天堂の彫刻3 三聖吸酸

更新日:2024年8月27日


三聖吸酸全景

聖天堂の奥殿の南側上部、唐破風からはふの下には、三人の聖人が一つの瓶を囲んでいる彫刻があります。これは、孔子、釈迦、老子が酢をなめて、その酸っぱさを共感している様子を表現したものであり、「三聖吸酸さんせいきゅうさん」という中国の故事に由来しています。つまり、酢が酸っぱいという事実は皆同じであり、儒教、仏教、道教など、宗教や思想が異なっているとしても、真理は一つであるという「三教一致さんきょういっち」を意味しています。
 
この故事のオリジナルは、儒教の蘇軾そしょくと道教の黄庭堅こうていけんという二人の書家が、仏教の仏印禅師ふついんぜんじのもとを訪れた際に、桃花酸とうかさんという酢をなめ、三人が共に顔をしかめたという逸話に基づいています。

「三聖吸酸」は、寺社建築や屏風絵などの題材として使用されることがあり、日光東照宮における陽明門ようめいもんの彫刻や、海北友松かいほうゆうしょうの『寒山拾得かんざんじっとく三酸図屏風さんさんずびょうぶ』(重要文化財)などにおいても見ることができます。
 
聖天堂における三聖吸酸の彫刻では、三聖人が前方を向き、共に人差し指を立てながら、酸っぱさを確認するように口を小さく開けています。その表情はとても温和であり、親しみを感じることができます。
 
また、彩色に目を向けると、孔子の服装や中央の瓶、植物の彫刻などに使われている緑色は孔雀石を原料としており、その色合いからはとても落ち着いた雰囲気が醸し出されています。これらの表情や彩色は、漆塗りされた周囲の木枠の中心に浮き上がり、独特の空間を作り上げています。まさしく、だれが目にしても「美しい」という事実がそこに存在していることが分かります。

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