このページの先頭です

漢方薬はなぜ食前または食間に飲んだほうが良いのか?

更新日:2021年8月1日

 昔から煎じ薬は、おおむね空腹時に飲んできました。現在の漢方製剤の錠剤や散剤も同様であります。古人はそのほうが良いらしいということで、かたくなにそれを踏襲してきたのですが、その科学的な理由が明らかになってきました。その前に、空腹時に飲んでも全く支障はないのかという問題があります。最近、漢方薬の「八味地黄丸(はちみじおうがん)」が尿漏れなどによいということで注目されていますが、胃弱の人が利用したらどうかというと薬害のある場合があります。それはこの漢方に含まれる「地黄」という生薬が胃に障るからです。さらに桂皮のように体を温める成分、それどころか熱薬ともいえる附子(ぶし)(トリカブト)などが含まれており、体力のある暑がり体質の人が飲んでも不都合があります。このように漢方は病名だけでは運用できません。症状と体質が薬方にピタリと合致して効果が発揮できるのです。これを「随証療法」といいます。
 さて本題に戻りますが空腹時の運用についてです。これを科学的に証明したのは、当時富山医科薬科大学生化学教室の名誉教授であり、そしてこの論文は、別の研究所の所長である博士により、広く薬剤師に知らしめることとなりました。
 漢方の処方を構成する生薬の成分は、ほとんどが「配糖体」といって本来の有効成分に糖類が結合した形で存在しております。そしてその効力を発揮する際はこの配糖体の糖類が外れた形で作用します。その反応は、全て私たちの腸の中で行われます。さらにこの配糖体に作用し糖類を切り離して生薬を有効な形にするのは腸内細菌だそうです。そしてここで一番大切なことは食後と空腹時における腸内細菌の構成が微妙に異なり、配糖体を分解する菌は空腹時に多いということだそうです。こういったことがたくさんの実験から証明されました。古来行われてきた漢方薬の空腹時服用がここに科学的に見事証明されたわけであります。

熊谷薬剤師会 長谷川 信治(はせがわ のぶはる)

このページについてのお問合せは

健康づくり課
電話:048-528-0601(直通) ファクス:048-528-0603

この担当課にメールを送る

本文ここまで